原子力発電所と火力発電所の構造の比較[原子力発電所2]

軽水形原子力発電所の蒸気タービンおよび発電機について,火力発電所との構造上の相違点を説明せよ。

 

目次

  1. 蒸気タービンの比較
  2. 発電機の比較
  3. まとめ

 

軽水形原子力発電所の蒸気タービンと発電機について,火力発電所との構造上の相違点は次の通りです。

 

1.蒸気タービンの比較

 

原子力タービンは原子炉から直接または蒸気発生器を経てその蒸気が供給される。

 

よって,燃料,炉心および構成材料の温度制限から蒸気条件が悪く,タービン入口で飽和温度であることが多いため,次のような構造となっている。

 

(1)使用蒸気量,タービンの大きさ

 

同一出力を得るための使用蒸気量は火力タービンの1.6〜1.8倍になるので,タービン,復水器が非常に大型になる。

 

また,最終段の羽根の長さを大きくしてケーシングの胴を太くしたり,低圧タービンを複流化して軸方向寸法を伸ばしたりする必要がある。

 

(2)回転数

 

タービン低圧段で湿り度が増加するので,羽根の侵食を減らすため,1500rpmまたは1800rpm(4極)となる。一方,火力発電所では3000rpmまたは3600rpm(2極)である。

 

(3)湿分分離器

 

タービン入口の湿り度が0.4%程度なので,最終段の湿分を許容値以下に収める必要がある。

 

よって,各段に湿分分離機能を持たせてドレン分離したり,高圧タービンと低圧タービンの連絡管の途中に湿分分離器が設置されている。

 

(4)沸騰水形原子力タービンの軸封対策

 

原子炉の放射能を帯びた蒸気がタービンに流入するため,放射線遮へい,放射性気体の廃棄物処理が必要である。

 

2.発電機の比較

 

原子力用タービン発電機も火力用タービン発電機も三相同期横軸回転界磁形発電機で本質的な違いはない。

 

詳細で見れば,蒸気条件からすべて4極機で回転数が1500rpmまたは1800rpmなので以下のような違いがある。

 

(1)冷却方式

 

4極機であるため,界磁巻線1極辺りの励磁起磁力が少なく,界磁巻線の銅量も増加できる。

 

したがって,励磁容量および界磁銅損が60%程度現象するので,ラジアルフロー形直接冷却方式が採用される。

 

(2)効率

 

回転数が低いので風損が減少し,界磁銅損,浮遊負荷損も少なくなるので効率が高くなる。

 

(3)遠心力,危険速度

 

回転数が2極機の半分,縦軸を同じにすると同一容量の回転子半径は1.5倍程度なので,遠心力は小さくなる。

 

危険速度も高くなるので,定格速度とのバランスは取りやすい。

 

3.まとめ

 

原子力発電所と火力発電所の蒸気タービンおよび発電機の相違点を理解できましたか。

 

原子力発電所では蒸気の条件が悪く,タービン入口で飽和温度になっている場合が多い。一方,火力発電所では過熱蒸気と理想的な状態になっている。

 

同一出力を得るためには,使用蒸気量が多くなることから,タービンや復水器の大きさは,原子力発電所の方が大きくなる。

 

原子力発電所のタービンでは,蒸気の湿り度が増加するので,低速で回転して羽根の侵食を抑制している。

 

また,放射性を帯びた蒸気がタービンに流入するので,放射線遮へいが必要です。

 

発電機の冷却方式は,ラジアルフロー形直接冷却方式であり,回転数が低いので風損などが減少して,発電効率が高くなる。

 

回転子半径は火力発電所の1.5倍程度となり,遠心力は小さくなる。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!