原子力発電所の出力制御方法を解説[原子力発電所5]

軽水炉の原子力発電所の出力制御について説明する。

 

目次

  1. 沸騰水型(BWR)原子炉
  2. 加圧水型(PWR)原子炉
  3. まとめ

1.沸騰水型(BWR)原子炉

 

沸騰水型原子炉の出力制御方法には,制御棒の位置調整と再循環流量調整の2通りがある。

 

(1)制御棒の位置調整

 

制御棒を炉心内に挿入または引き抜くことにより反応度を変化させて出力調整する方法である。

 

起動・停止操作時の大幅な出力変更,低出力時の出力制御,炉心出力分布の調整,長時間の燃焼に伴う反応度の補償などに用いられる。

 

原子炉の緊急停止のためにも,制御棒を緊急挿入(スクラム)する方法が用いられる。

 

(2)   再循環流量の調整

 

沸騰水型の炉心には水と蒸気が混在しており,蒸気の割合(ボイド率と呼ぶ)が増加すると,単位体積当たりの減速材(軽水)の割合が減少して中性子が減速されにくくなる。

 

その結果,燃料に吸収される中性子の量が減って出力が低下する。

 

この特性を利用して,出力を低下させる時は炉心の再循環流量を減らしてボイド率を増加させ,逆に出力を上昇させる時は炉心の再循環流量を増加させてボイド率を低下させる。

 

再循環流量の調整による出力制御は,定格出力の70〜80%以上の高出力運転中の制御に用いられる。

 

炉心内の出力分布にほとんど影響を与えず,流量にほぼ比例した出力が得られる。

 

再循環流量の調整方法には,再循環ポンプの速度を制御する方法と流量調整弁開度を制御する方法がある。

 

2.加圧水型(PWR)原子炉

 

加圧水型原子炉の出力制御方法には,制御棒クラスタの位置調整とホウ素濃度調整の2通りがある。

 

(1)制御棒クラスタの位置調整

 

制御棒クラスタを炉心内に挿入または引き抜くことにより反応度を変化させて出力調整する方法である。

 

制御棒クラスタは,制御グループと停止グループとに分けられる。

 

通常運転状態では停止グループは全部引き抜き状態にある。

 

出力を変更する場合は,タービン側で蒸気流量を加減弁開度で調整して,その結果生じる原子炉の状態変化を検出して制御グループの制御棒クラスタを位置調整する。

 

起動時は,停止グループを全部引き抜いた後,制御グループの引き抜きとホウ素濃度調整により臨界状態にする。

 

逆に停止時は,ホウ素濃度を上げて制御グループの挿入および停止グループの挿入を行う。

 

原子炉を出力状態から速やかに高温停止する場合は,停止グループと制御グループの両方を急速に挿入,冷態停止の時はさらにホウ素濃度の調整を併用する(ホウ素濃度を上げる)。

 

(2)ホウ素濃度の調整

 

一次冷却材中のホウ素濃度を調整する方法でケミカルシムとも呼ばれる。

 

ホウ素は中性子を吸収しやすい物質で,濃度を上げると中性子が減少して原子炉の出力が低下する。

 

ホウ素濃度の調整は,ホウ酸溶液または純水の注入と余分な一次冷却材の抽出により行われる。

 

3.まとめ

 

沸騰水型BWRおよび加圧水型PWRの出力の制御方法について説明しました。

 

沸騰水型では,制御棒の位置調整と再循環流量の調整により出力制御を行う。

 

起動停止時の大幅な出力変更や低出力運転中は制御棒の抜き差しで,70〜80%の高出力運転中では再循環流量の調整を用いる。

 

一方,加圧水型では制御棒クラスタの位置調整とホウ素濃度の調整で出力制御を行う。

 

起動時は,制御棒クラスタの停止グループを引き抜いた後,制御グループも引き抜き,さらにホウ素濃度を下げることで臨界状態にする。停止する場合は逆の順序とする。

 

緊急停止する場合は,停止グループおよび制御グループの両方を急速に挿入して,ホウ素濃度も上げて,中性子を吸収して核分裂を抑制する。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!