以下の単線結線図に示すような自家用変電所において,三相変圧器Bに内部故障が午前9時に発生し,変圧器の一次側および二次側とも遮断器(O12およびO22)が開放した。
故障した変圧器が復帰するまでの間,電力を供給するための考え方などについて次の問に答えます。
[条件]
①66kV送電線への事故波及はなかったものとする。
②当面の予想日負荷曲線は以下の日負荷曲線の通りで,負荷の力率は0.9とする。
③故障発生時は母線の連絡用遮断器O40のみ開放状態にあったものとする。
④変圧器の冷却方式は油入自冷式で製造年月は不明とする。
⑤非常用予備電源はないものとする。
目次
- 事故直後の電力供給の考え方とその操作手順について簡潔に説明
- 変圧器Bが復帰するまでのピーク負荷への対応策の項目をあげ,それについて簡潔に説明
- まとめ
1.事故直後の電力供給の考え方とその操作手順について簡潔に説明
(1)事故直後の電力供給の考え方
設問の自家用変電所のA,B変圧器は,6.6kV母線連絡用遮断器O40が開放されており,A,B変圧器の並列運転ではなく,それぞれが単独運転して負荷を担っている状態である。
B変圧器の内部故障でB変圧器側のO81,O82供給線の負荷が全停状態となったことから,O81,O82供給線の早期復旧を図ることになる。
非常用予備電源がないことから,A変圧器側へB変圧器が担っていた負荷を片寄せして早期復電を図ることとする。
日負荷曲線から判断すると負荷容量は13.3MVA(12kW/0.9)であることから,A変圧器1台で需要家内のすべての負荷を担ってもA変圧器は過負荷となることはない。
よって,早急に開閉器類の操作を行い,O81,O82供給線の復電を図る。
(2)復電の操作手順
① LS21,LS22を開放して故障変圧器を回路から切り離しておく
② 安全を考慮し,O81,O82を開放する
③ O40を投入し,O81 ,O82側の6.6kV母線を充電する。
④ O81 ,O82遮断器を投入して復電とする。
状況に応じて,①の操作は最後に行うこともある。
2.変圧器Bが復帰するまでのピーク負荷への対応策の項目をあげ,それについて簡潔に説明
日負荷曲線から判断すると12時から16時の間の負荷容量は23.3MVA(21kW/0.9)であり,A変圧器1台で需要家内のすべての負荷を担うと,117%の短時間(4時間)過負荷運転となることから,以下の検討を行う。
(1)変圧器の短時間過負荷運転限度の検討
使用年数が20年以上の変圧器は個々に十分な検討が望まれ,設問の変圧器は油入自冷式で製造年月が不明であることから,以下の項目を十分に検討して過負荷運転限度を決定する。
①周囲温度の低下による過負荷の検討
② 温度上昇試験記録による過負荷の検討
③ 短時間の過負荷の検討
④ 負荷率低下による過負荷の検討
⑤ 様々な条件が重なった場合の過負荷の検討
(2)過負荷運転を行う場合の設備点検の強化
①変圧器巻線温度測定および監視の強化最高温度部分の温度を指示するように目盛りした温度計で95℃,埋込温度計で90℃を超過しない範囲内の過負荷を連続的に課せることができるので,変圧器を主とした設備全体の点検強化を図る。
ただし,温度計の正確さについては,前もって調べておくことが必要であって,一般に温度計の正確度については事前に調べておく必要があり,温度計を過信したぎりぎりの使い方をするのは危険であるので避ける。
②変圧室内の巡視強化
特に変圧器の異音などには十分注意して,巡視強化を図る。
③電圧・電流などの監視強化
過負荷運転限度を超過しないかなど,監視の強化を図る。
(3)ピークカット負荷の検討
変圧器の過負荷運転限度を需要が上回ると予想される場合,ピークカットする負荷を事前に検討しておく。
この場合,需要家内の生産性などを十分に考慮して個々にピークカットを行う負荷の容量を把握しておき,カットする優先順位を検討しておくことが大切である。
(4)緊急用電源の確保の検討
B変圧器の復帰が長時間化されると判断された場合,A変圧器の事故を想定して,一般電気事業者から,6.6kVによる二次側への仮供給や移動用電源車による電力供給確保についても検討・協議を行う。
3.まとめ
自家用変電所において,三相変圧器の内部故障が発生した場合の復旧手順と,ピーク負荷への供給対策について説明した。
故障した変圧器の早期復旧が見込めない場合,並列運転していた負荷すべてを正常な変圧器で供給できる場合は,開閉器操作で故障した変圧器を安全に回路から切り離した後に,正常な変圧器での全負荷の供給を行う。
ピーク負荷のように1つの変圧器で供給できない場合は,変圧器の過負荷の度合を確認して,120%以内の過負荷であれば,変圧器の温度管理を強化した上で,巡視強化を図りながら,過負荷運用を行う。
温度上昇から運用ができないようであれば,負荷を遮断する優先順位をあらかじめ決めておき,状況に応じた負荷への供給を行う。
同時に,移動用電源車や一般電気事業者から6.6kVによる二次側への仮給電による緊急用電源の確保を検討,実施する。
それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!
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