自然災害による事故は,風,雷,塩,氷雪などが原因で発生する。
1.風による事故
風により,支持物の倒壊,折損,傾斜,電線の断線などの事故が生じる。
(対策)
高圧架空配電線を接地する地域の自然条件に耐えるよう,支持物や電線の強度を高める。
(1)支持物
電気設備の技術基準に従って,風に対しては甲種,乙種,丙種の風圧荷重による設計を行う。
また,氷雪については氷雪の多い地方,氷雪の多い地方以下の地方,氷雪の多い地方のうち海岸地その他の低温季に最大風圧を生じる地方に分ける。
各々の条件に対し,支持物の種類に応じた安全率を考えた強度をもたせるようにする。
(2)基礎
基礎の安全率を,それぞれの地域の自然条件に対する想定荷重に対して,2以上にとる。
木柱,コンクリート柱の安全率の確保は根入れの深さで確保する。
地盤が軟弱な場所では根かせにより補強する。
全長15m以下の支持物の場合,根入れは全長の1/6以上とする。
(3)電線
その地域の自然条件に応じた風圧荷重と電線の重量,気温による影響を考慮し,硬銅線,耐熱銅合金線では安全率が2.2以上,その他の電線では2.5以上になるようにたるみを持たせて施設する。
2.雷による事故
事故の大半は誘導らいにより生じ,柱上変圧器,開閉器の機器類に被害が多く,電線,がいし類がこれらに次いでいる。
(対策)
(1)架空地線の設置
架空地線と導体との離隔距離はできるだけ小さくして,架空地線の接地間隔はできるだけ短くする。
また,遮へい角は45°以内にするのが効果的である。
(2)避雷器の取付
柱上機器の極力近くに避雷器を取り付ける。
特に雷撃頻度の高い場所では機器設置ごとに避雷器を設置する。
3.塩害による事故
海岸から1〜2kmの場所で,台風や季節風により発生する。
被害を最も受けるのはがいし類で,がいしの漏れ電流による劣化や破損が生じる。
これらに次いで,機器や電線が被害を受ける。
(対策)
(1)がいし類に対しては耐塩がいしの採用,がいしの活線洗浄,コンパウンドの塗布,がいしの連結個数の増加による過絶縁などがある。
(2)柱上設置の機器類には,漏れ電流の増加によるブッシングの劣化破損,リード線のトラッキング(炭化)による絶縁劣化と劣化進行によるフラッシオーバがある。
このため耐塩構造ブッシング,シリコンコンパウンドの塗布,リード線には耐トラッキング性の優れた絶縁物を使用する。
(3)絶縁電線,ケーブルに生じる事故は端末部のトラッキングがほとんどである。
根本的には耐トラッキング性の優れた電線,ケーブルを使用することであるが,耐塩用ケーブルヘッドの取付けや耐トラッキング性絶縁テープの使用などがある。
4.氷雪害による事故
着氷雪のいっせい脱落によるスリートジャンプやギャロッピングなどで生じる電線の混触などの電気的事故と着氷雪による荷重の増加で生じる支持物の損傷,倒壊,電線の断線などの機械的事故が生じる。
(対策)
(1)着氷雪に対しては,氷雪の付着しにくい電線の採用,着氷雪が脱落しやすいように電線に適当な間隔をあけてテープ巻きを行うなどがある。
また,着氷雪荷重に耐える電線の使用,支線などによる支持物の強化,混触防止のためには離隔距離の拡大,絶縁電線の使用などがある。
(2)冠雪に対しては,支持物のちょうぶの面積を減少させて,積雪しにくいようにする。
また,冠雪の成長を防ぐために柱とアームの間隔を大きくする,冠雪用アームの取付けなどがある。
(3)雪崩に対しては,雪崩発生防止のための杭,柵の設置,雪崩で支持物が被害を受けないよう雪覆いの設置,なだれの方向を誘導する誘導堤の設置がある。
しかしながら,根本的には雪崩の発生しないルートを選定することである。
5.まとめ
高圧架空配電線の自然災害による事故とその防止対策について説明しました。
自然災害による事故は,風,雷,塩,氷雪などが原因で発生します。
風害防止には,当該地域の自然条件に耐えうるよう支持物,基礎や電線の強度を高めることで対応します。
雷害防止には,架空地線の設置と避雷器の取付けで対応する。
塩害防止には,耐塩がいし,耐塩構造ブッシング,耐トラッキング性の優れた絶縁電線,絶縁テープを採用する。
氷雪害防止には,着氷雪の荷重に耐える電線の使用,支線などによる支持物の強化,絶縁電線の使用があげられる。
それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!
コメントをお書きください