変電所の絶縁協調を検討する際,考慮すべき電力系統に発生する過電圧の発生原因について説明する。
目次
- 雷過電圧
- 開閉過電圧
- 短時間過電圧
- まとめ

変電所の絶縁協調を検討する際,考慮すべき電力系統に発生する過電圧の発生原因を説明する。
1.雷過電圧
雷過電圧には直撃雷,逆フラッシオーバによるもの,誘導雷がある。
直撃雷による過電圧は,送電線の電力線や機器が直接雷撃を受けた時に発生するもので,雷撃電流と雷撃点から見たサージインピーダンスの積になる。
過去に磁鋼片で観測された例では,雷撃電流の波高値の最大値は100〜150kAで,ほとんどが負極性である。
著しく大きな過電圧なので架空地線で遮蔽して電線への直撃を受けないようにしている。
遮へい失敗あるいは架空地線や鉄塔への落雷による逆フラッシオーバがあると,電力線から変電所に雷サージが侵入する。
誘導雷は雷雲が送電線に近づいて送電線に電荷が誘導された状態で,その雷雲の電荷が他の雷雲や大地に放電して送電線の電荷が自由電荷となり,サージ性の過電圧が発生するもの。
波高値はかなり低く100〜200kV以下である。
2.開閉過電圧
開閉過電圧は遮断器や断路器の開閉により発生する電圧である。
無負荷送電線等の充電電流遮断,故障電流の遮断,変圧器励磁電流の遮断,高速再閉路投入などがある。
(1)無負荷送電線などの充電電流(進み小電流)遮断
無負荷送電線の充電電流は90°進み電流である。
線路側に波高値を相当する電荷を残留した状態で電流遮断されるので,その半サイクル後に遮断器の極間に波高値の2倍に近い電圧が発生して再点弧しやすい。
再点弧が起こると,電源のインダクタンスとの間の高周波振動を伴い,異常に高い電圧を発生する。
GISの断路器を遮断するときも,遮断器との短い電路を開放するため,特に周波数の高い過電圧が発生する。
(2)故障電流の遮断
故障した送電線を遮断する場合,1線地絡で常時よりも電圧が高くなった健全相の充電電流の遮断や,異相地絡・脱調のように極間の回復電圧が高い状態などでの遮断になり,異常電圧が発生する。
また中性点がリアクトル接地系統で零相インピーダンスの大きな系統では,故障電流が90°近く位相の遅れた電流となる。
これを遮断すると電源側電圧が遮断直前の最大アーク電圧より電源電圧に急変するため過渡的に異常電圧が発生する。
(3)変圧器励磁電流等(遅れ小電流)の遮断
変圧器の励磁電流などの遅れ小電流を消弧力の強い遮断器で遮断すると,電流裁断による電流変化率di/dtに比例した異常電圧が発生する。
遮断器の種類や変圧器の中性点接地方式によっても異なるが,最大でもじょうき対地電圧の5倍程度の過電圧になる。
(4)高速再閉路
高速再閉路方式では事故遮断後1秒程度で,線路側にかなりの残留電荷が残った状態で再閉路されることから,再点弧に相当する投入サージが発生する。
3.短時間過電圧
(1)1線地絡・2線地絡短絡時の健全相電圧上昇
非接地系統や高インピーダンス接地系統では,1線地絡,2線地絡短絡時に中性点の電位が上昇して健全相対地電圧が上昇する。
(2)負荷遮断時の電圧上昇
負荷遮断が起こると,送電線充電電流によるフェランチ現象,発電機の負荷遮断による回転数上昇に伴い発電機端子電圧の上昇により,過電圧が発生する。
4.まとめ
変電所の絶縁協調を検討する際,考慮すべき電力系統に発生する過電圧の発生原因について説明しました。
雷過電圧として,電力線や機器への直撃雷によるもの,逆フラッシオーバによるもの,誘導雷がありました。
開閉過電圧として,遮断器や断路器の開閉により発生する過電圧があり,具体的には無負荷送電線等の充電電流の遮断(進み小電流),故障電流の遮断,変圧器励磁電流の遮断(遅れ小電流),高速再閉路投入などがありました。
短時間過電圧として,1線地絡・2線地絡短絡時の健全相電圧上昇,負荷遮断時の電圧上昇がありました。
それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!
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