電力系統に発生する異常電圧には,峻度および波高値の著しく過大なものがある。
変電所の各機器,母線,がいしなどの絶縁耐力をこれに耐えるように設計することは経済的にも困難である。
そこでこれらの異常電圧に対して,特別な防護装置を設けるとか,絶縁に対して安全な程度にまで異常電圧の峻度や波高値を低減させて,それ以下の異常電圧に対して十分な絶縁耐力をもたせるよう設計する。
1.直撃雷に対する絶縁設計
直撃雷は峻度および波高値が最も大きく,変電所の絶縁耐力をこれに対応できるよう設計することは不可能である。
また,避雷器などによっても十分に保護することは困難であり,変電所自体はもとより変電所から約1km以内の範囲の架空送電線に対して,架空地線を設けて送電線の接地に雷サージの大部分が流れるよう設計する。
また,変電所引込みの架空地線は多条化し,構内の架空地線と連結接地させて,接地抵抗を極力低下させて大地に雷サージが流れやすくする。
また,変電所の接地を連結させることは,変電所が等電位化されることから,電位差による雷サージの抑制効果を期待できる。
2.誘導雷に対する絶縁設計
変電所に侵入する直撃雷以外の誘導雷にも峻度や波高値の大きいものがあるので,これらに対して適正に配置された避雷器で対応する。
避雷器を配置することで変電所の過電圧を一定レベル内に低減でき,絶縁設計が容易になる。
3.所内機器,施設の絶縁設計
架空地線の施設や避雷器の適正配置で,変電所の過電圧レベルが一定化される。
よって変電所内の各機器は,機種または設置位置に対して絶縁格差を設ける必要がなく,各系統電圧に対して定められた基準衝撃絶縁強度(BIL:Basic Insulation Level)を統一して設計ができ標準化が図られる。
なお,使用条件などによって絶縁協調を図らねばならないものは,その試験条件などを変えて規格内で協調を図る。
たとえば,屋外において風雨にさらして使用されるがいし,がい管類に対しては汚損,湿潤などを考えて同一BILにおいて,その試験条件を変えて絶縁格差をつける。
また変電所避雷器の保護範囲外に設置された電位変成器や結合コンデンサに対しても所定のBILの120%値をとるよう設計する。
変圧器中性点の絶縁耐力は系統の公称電圧を基準としてBILが定められており,非有効接地系では中性点に避雷器を設置する。
母線の絶縁は対地間ではBILを基準とし,BILを超える値でのフラッシオーバを許容した設計とする。相間は他相の影響を考慮して大地間よりも大きくBILの150%値を目標とする。
また,風,短絡時の電磁力による横振れした場合にも最小絶縁間隔以下とならないよう余裕をもたせる。
がいし,がい管類の外部絶縁は基本的にはBIL,商用周波試験電圧によって決定されるが,汚損性能については1線地絡時の健全相電圧に耐えるよう設計する。
なお,接地線に雷サージが流れる場合,制御回路,通信設備,所内電灯回路,水道などに異常電圧を誘起することがあるので,これらの遮へいやそれぞれの電圧階級に合致した避雷器の設置などについても検討する。
4.まとめ
異常電圧に対する変電所の絶縁設計の基本的な考え方について説明しました。
直撃雷は過大であることから,変電所の絶縁耐力をこれに対応できるよう設計することは不可能である。また,避雷器でも完全に保護することは困難である。
よって,変電所近傍の架空送電線に架空地線を設けて雷サージの大部分を処理する。変電所引込みの架空地線は多条化し,構内の接地抵抗を極力低下させて大地に雷サージが流れやすく設計する。
誘導雷に対しては,適正に配置された避雷器で変電所の過電圧を一定レベルに抑制して絶縁設計を検討する。
所内機器,施設には絶縁基準の考え方を導入する。
架空地線の施設や避雷器の適正配置で,変電所の過電圧レベルが一定化されるので,変電所内の各機器は,機種または設置位置に対して絶縁格差を設ける必要がなく,各系統電圧に対して定められた基準衝撃絶縁強度(BIL:Basic Insulation Level)を統一して設計ができ標準化が図られる。
変電所の接地に雷サージが流れる場合,制御回路,通信設備,所内電灯回路,水道などに異常電圧を誘起することがあるので,これらの遮へいやそれぞれの電圧階級に合致した避雷器の設置などについても検討する。
それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!
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