架空送電線の故障点標定の難しさを解説[送電線9]

 架空送電線の故障点標定が地中送電線の場合と比べて困難な理由を説明する。 

 

目次

  1. 送電線の事故様相
  2. 送電線の形態とサージの伝搬
  3. 標定信号のノイズの影響
  4. まとめ

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架空送電線は,地中送電線より圧倒的に事故率が高い。

 

また,比較的長距離で山間部を通過する場合が多く,設備の状況把握,故障復旧の迅速化などのため,故障点を精度よく標定することが重要である。

 

現在,架空送電線の故障点標定方式(フォルトロケータ)として,サージ受信方式,パルス受信方式,インピーダンス標定方式などが適用されている。

 

架空送電線の故障点標定は,地中送電線と比べて技術的に困難な点は次の通りである。

 

1.送電線の事故様相

  

地中送電線の故障は永久地絡がほとんどである。

 

保護リレーの動作状況や線路の絶縁方式,心線の導通状態から事故種別を把握し,マーレーループ法,静電容量法,パルスレーダー法など適切な方法により故障点を見つければ良い。

 

これに対して架空送電線は,永久完全地絡もあるが,大半がフラッシオーバによる地絡や短絡故障である。

 

遮断器がトリップして無電圧になれば,フラッシオーバしたがいしの絶縁は80%回復する。

 

また,がいし連の一部が損傷しても相当な絶縁があるので,遮断器がトリップするまでの短時間に標定する必要がある。

 

故障点を標定するためには,故障点アーク抵抗の影響や,多重故障,多地点同時故障などの多種多様の故障モードを考慮する必要がある。

 

2.送電線の形態とサージの伝搬

 

 地中送電線はほとんどが2端子であるが,架空送電線は分岐線を多数もつ場合が多い。

 

よって,故障点からの故障サージや印加パルスの反射,透過現象が複雑になる。

 

3.標定信号のノイズの影響

 

故障継続中に標定するので,故障中のアーク電流や故障遮断時のサージなど大きな妨害ノイズの影響を受けやすい。

 

そのため,標定信号を十分に大きくするなどの考慮が必要である。

 

また,電力線搬送装置との相互干渉,送電線のコロナなど,その他のさまざまな妨害ノイズの影響も受けやすい。

 

4.まとめ

 架空送電線の故障点標定が地中送電線の場合と比べて困難な理由を説明しました。

 

架空送電線の故障標定が困難な理由として,遮断器がトリップするまでの短時間に標定する必要があること,多重故障,多地点同時故障などの多種多様の故障モードがあること,分岐線があり故障点からの故障サージや印加パルスの反射,透過現象が複雑になること,故障中のアーク電流や故障遮断時のサージなどの大きな妨害ノイズの影響を受けやすいことがあげられる。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!

 

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