架空送電線からの誘導障害に関して,通信線に対する電磁誘導障害の防止対策および超高圧送電線の静電誘導障害の防止対策を説明する。
目次
- 通信線に対する電磁誘導障害の防止対策
- 超高圧送電線の静電誘導障害の防止対策
- まとめ
1.通信線に対する電磁誘導障害の防止対策
通信線の誘導電圧により受話器に商用周波の雑音が入ったり,線下の物体,人,家畜への電撃を防止する。また,通信線の作業員の誘導電圧による電撃も防止する。
(1)送電線と通信線との離隔距離をできるだけ大きくし,交差する場合にはできるだけ直角にする(相互インダクタンスMを小さくする)。
(2)通信線と送電線の間に導電率のよい遮へい線を設ける。
通信線の近くに設置するほど効果は高い。
(3)電力線側の対策
①電磁誘導電圧を小さくするため,送電線のねん架を完全にし,できるだけ不平衡が生じないようにする。
②起誘導電流(零相電流)を制限する。
直接接地系では高速度の故障検出と遮断を行う。
抵抗接地系では中性点接地抵抗を大きくするか,消弧リアクトル接地を採用し,地絡電流を抑制する。
③架空地線で故障電流を分流させて,起誘導電流を減少させる。
架空線の条数を増やすことも効果的であり,導電率の良いものを採用することで遮へい線の効果もある。
(4)通信線側の対策
①中継コイルを使用する。
通信線の途中に中継コイルや絶縁トランスを入れ,誘導こう長を短くする。
②通信線に電磁遮へいをしたケーブルを使用する。
③テンションメンバーが非導電性の光ケーブルを採用する。
④保安装置の設置
避雷器や保安器を設置する。
2.超高圧送電線の静電誘導障害の防止対策
静電誘導障害には送電線下にある絶縁された金属体(傘,柵など)に電圧が誘導され,人が触れたときに感じる静電誘導感知と接近した通信線に発生する雑音障害の2つがある。
(1)静電誘導感知の防止方法
①送電線の電線地上高を高くして,地表面付近の電界強度を弱める(地上1mの電界強度が30V/cm以下と定められている:275kV送電線の電線地上高15mの直下の電界強度レベル)
②2回線垂直配列の送電線では,回線毎に相順を逆にする逆相配列とする。
③柵や保護網または遮へい線などを設ける。
④送電線に近接して施設される金属製の柵,屋根等にD種接地工事を施す。
(2)雑音障害の防止方法
①送電線および通信線を十分にねん架する。
②送電線と通信線の離隔距離をできるだけ大きくする。
間に樹木や丘陵があると遮へい効果は大きい。
③送電線と通信線の間に遮へい線を設ける。
④通信線に遮へいケーブルを使用する。また,接地工事を施した金属線でちょう架する。
3.まとめ
通信線に対する電磁誘導障害の防止対策および超高圧送電線の静電誘導障害の防止対策について説明しました。
通信線に対する電磁誘導障害の防止対策として,送電線と通信線との離隔距離の縮小と交差の直角化,通信線と送電線の間の遮へい線の設置する。
また,電力線側の対策として,送電線のねん架の実施,起誘導電流(零相電流)の制限,架空地線での故障電流の分流があげられる。
一方,通信線側の対策として,中継コイルや絶縁トランスの使用,電磁遮へいケーブルの採用,テンションメンバーが非導電性の光ケーブルを採用,保安装置の設置があげられる。
超高圧送電線の静電誘導障害の防止対策の内,静電誘導感知の防止方法として,送電線の電線地上高を高くして,地表面付近の電界強度を弱める方法,2回線送電線の配列を逆相配列とする方法,柵や保護網または遮へい線などを設ける,送電線下の金属製の柵,屋根等にD種接地工事を施すことがあげられる。
また,雑音障害の防止方法として,送電線および通信線のねん架,送電線と通信線の離隔距離の拡大,遮へい線の設置,通信線への遮へいケーブルの採用や接地工事を施した金属線でちょう架する方法があげられる。
それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!
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