送電線の再閉路方式の種類を解説[送電線15]

架空送電線の再閉路方式の種類と概要および各々の利点について説明する。

 

目次

  1. 再閉路方式の種類と概要
  2. 再閉路方式採用の利点
  3. まとめ

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架空送電線の事故の大部分は,雷によるがいしのフラッシオーバ,樹木接触など,アーク地絡,アーク短絡事故である。

 

故障区間を一旦,切り離せばアークは自然消滅するので,事故点の絶縁回復を待って再び遮断器を投入すれば,異常なく送電を継続できる。

これを再閉路と呼ぶ。

 

1.再閉路方式の種類と概要

 

再閉路方式は三相再閉路,単相再閉路,多相再閉路および同期再閉路に分類される。

 

無電圧時間によって高速再閉路,中速再閉路および低速再閉路に分類される。

 

無電圧時間は一般的に高速再閉路で25〜50サイクル(400〜850ms程度),低速再閉路の場合,1分程度である。

 

なお,単相,多相,同期再閉路はすべて高速再閉路に分類される。

 

※参考:無電圧時間

66・77kV:200〜300ms(12〜17サイクル程度)

154kV:100ms(6サイクル程度)

275・500kV:50ms(3サイクル程度)

 

(1)三相再閉路方式

 

送電線の事故様相に関係なく,三相一括遮断し,アーク消滅後に一括投入する再閉路方式である。

 

2回線送電線における1回線事故の場合,事故送電線を遮断しても健全回線で連系(同期)が保たれているので,高速再閉路が可能である。

 

一方,1回線送電線では,三相遮断で両系統が切り離されて同期が保てなくなるので,一方の端子を先行投入して,もう1方の端子で両系統の電圧位相角を確認して再閉路する低速再閉路となる。

 

遮断器が三相一括遮断器ですむ,事故相までを確実に選別できなくても良いので保護方式が簡単である。

 

以上の理由より,154kV以下の送電線に広く採用されている。

 

(2)単相再閉路方式

 

送電線事故のうちで最も多い1相事故の場合に故障相だけを遮断し再閉路を行う方式である。1相が遮断されても残りの2相で送電を継続でき,安定度を保つことができる。

 

2相以上の事故の場合は三相再閉路となる。

 

超高圧の1回線送電線や火力発電所等の電源線でよく使用されており,無電圧時間中の欠相状態で流れる逆相電流によるタービン間のねじりトルク等の影響を検討の上,採用されている。

 

(3)多相再閉路方式

 

2回線送電線6本の内,異なる2相(2相残り)もしくは3相(3相残り)が健全である場合に,故障相だけを遮断し再閉路する方式である。

 

2回線6本の合計で判断するので,回線間の条件受け渡しは生じるが,単相再閉路方式と比較しても再閉路成功率が著しく向上するので,超高圧送電線の2回線送電線,特に連系線で採用される。

 

(4)同期再閉路方式

 

2つの電力系統が2ルート以上の2回線送電線で連系されている場合には,1ルート6線がすべて遮断されても同期は維持されていることが多い。

 

同期再閉路方式は,両端子の電圧位相差が一定値以内で同期がとれていることを検出して再閉路するものである。

 

2ルート同時に苛酷な事故が発生することはないので,ほぼ100%再閉路可能である。

 

2.再閉路方式採用の利点

 

(1)2回線送電線の場合,両回線に事故が発生しても,健全相によって連系を保てれば停電を回避することができる。

 

(2)1回線送電線の場合,アークの自然消滅によって短時間の停電で復旧できる。

 

(3)高速再閉路によれば,送電の安定度を高めることができる。

 

(4)事故送電線以外の他の送電線が過負荷によって遮断されるなどの,事故波及を防ぐことができる。

 

3.まとめ

☆誰も知らない画期的な電験論説攻略方法☆

 

架空送電線の再閉路方式の種類と概要および各々の利点について説明しました。

再閉路方式は三相再閉路,単相再閉路,多相再閉路および同期再閉路に分類される。

 

再閉路方式を採用することで,2回線送電線の場合,両回線に事故が発生しても健全相によって連系を保った状態であれば停電(永久事故)を回避することができる。また,1回線送電線の場合,アークの自然消滅によって短時間の停電で復旧できる。

 

 

再閉路が採用されることで,事故送電線以外の他の送電線が過負荷によって遮断されるなどの,事故波及を防ぐことができる。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!