消弧リアクトル接地方式の解説[送電線17]

消弧リアクトル接地系統で1線地絡故障を生じた場合,故障点のアークが自然消弧される理由を説明する。

 

また消弧リアクトルを超高圧送電線に使用することは不適当であることを説明する。

 

目次

  1. 故障点のアークが自然消弧される理由
  2. 消弧リアクトル方式が超高圧送電線に不適当である理由
  3. まとめ

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1.故障点のアークが自然消弧される理由

 

消弧リアクトル接地系統で1線地絡故障を生じた場合,1線の対地静電容量を C [F],消弧リアクトルのインダクタンスを L [H],系統の周波数をf [Hz] ,ω=2πf,相電圧をE=El/√3[V]とすると,接地点からみた等価回路はテブナンの定理によって以下の画像のようになる。

 

 

したがって,接地電流 Ig は3Cに流れるIc=j3ωCE [A] とLに流れる IL=−jE/ωL [A]

和になる。

 

IcはEよりも90°進み,ILは90°送れるので,Ic=ILとすると,接地電流はIg=0になり,故障アークが自然消滅して健全回路に戻る。

 

これが消弧リアクトルの原理である。

 

しかし実際には直列共振現象を避けるために,消弧リアクトルのタップを過補償または不足補償のいずれかにずらしているが,接地アーク電流値が20A以下なら概ね自然消弧する。

 

2.消弧リアクトル方式が超高圧送電線に不適当である理由

 

消弧リアクトル方式は100kV程度までの送電系統でよく用いられるが,超高圧送電線に用いられない理由は以下の通り。

 

(1)送電線こう長が長いために,1線地絡時の健全相(二相)に発生するコロナ損失による零相地絡電流が大きく,消弧が困難になる。

 

これが超高圧送電線に消弧リアクトルを用いない最も本質的な理由である。

 

これ以外にも以下のような理由がある。

 

(2)消弧リアクトル系統とするためには,多くのねん架鉄塔が必要になるが,ねん架鉄塔は工事費も高く,複雑で事故を発生しやすい構造になるので感心できない。

 

(3)超高圧系統では,直接接地方式による機器の絶縁階級の低下,送電線がいし個数の削減による送電線工事費の抑制効果が大きい。

 

よって,消弧リアクトル系統は,経済的見地からも直接接地方式に劣ってしまう。

 

(4)超高圧送電線は,連系によりその全こう長が飛躍的に大きくなり,必要な過補償(または不足補償)における残留電流が大きくなるため自然消弧が困難になる。

 

(5)直接接地方式では地絡電流が大きいが,超高圧機器の進歩により高速度故障遮断が可能であり,系統運用の信頼度上からも直接接地方式に分がある。

 

3.まとめ

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消弧リアクトル接地系統で1線地絡故障を生じた場合における故障点のアークが自然消弧される理由,ならびに,消弧リアクトルを超高圧送電線に使用することは不適当であることを説明しました。

 

故障点のアークが自然消弧される理由として,線路の静電容量 から流れる電流と,中性点のリアクトルに流れる電流が,逆位相で大きさが同じであれば,接地電流が0になり,故障アークが自然消滅して健全回路に戻る点があげられる。

 

消弧リアクトルを超高圧送電線に使用することは不適当である理由は,送電線こう長が長いために,1線地絡時の健全相(二相)に発生するコロナ損失による零相地絡電流が大きく,消弧が困難になるためである。

 

それ以外には,消弧リアクトル接地を採用すると,多くのねん架鉄塔が必要になる,直接接地方式による機器の絶縁階級の低下,送電線がいし個数の削減による送電線工事費の抑制効果が得られない,必要な過補償における残留電流が大きくなり自然消弧が困難になる,直接接地方式では地絡電流が大きいが,超高圧機器の進歩により高速度故障遮断が可能であり,系統運用の信頼度上からも直接接地方式に分があるようなメリットを享受できなくなる。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!

 

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