送電線の短絡保護として用いられる過電流継電器,短絡方向継電器,短絡回線選択継電器および距離継電器について,それぞれの適用上における特徴を説明する。
目次
- 過電流継電器
- 短絡方向継電器
- 短絡回線選択継電器
- 距離継電器
- まとめ
1.過電流継電器
過電流継電方式は設備が簡単,安価で構造性能が比較的に簡単な利点を持っている。
適用にあたっては隣接保護区間との動作協調上,故障除去時間の遅延,系統変化による故障電流および負荷電流の増減に伴う整定値の変更など運用上の問題があるため,比較的重要度の低い送電線の主保護または後備保護として使用される。
過電流継電方式を最も容易に主保護として適用できる送電線は,一端のみに電源をもつ放射状系統で電源容量がほぼ一定の場合である。
この場合,電流検出値は最大負荷電流で動作せず,最小故障電流を確実に検出できる値とし,故障区間選択のため,各区間に不必要な停電を防止するため時限差をもたせる。
時限差は末端区間を最も短くし,次の区間は遮断器の遮断時間と過電流継電器の慣性動作および若干の安全率時間を加えた値に整定すれば良い。
過電流継電器の動作時限方式には反時限方式と定時限方式があるが,反時限方式を適用すると事故電流が大きいほど動作時間が短くなることで,選択性を維持しながら事故除去ができることから,故障除去時間を短縮できる利点がある。
故障電流が小さく負荷電流との差が少ない場合は動作時間がのびるので,電圧抑制付過電流継電器を使用すれば良い。
過電流継電器は三相回路におのおの設置することが望ましいが,2組のみに設置する場合は,継電器設備のない相が異なった回線で同時に地絡故障を生じ2相短絡となった場合,位相が逆位相となり打ち消しあう状態で不動作とならぬようにしなければならない。
2.短絡方向継電器
短絡方向継電方式は,過電流継電方式が故障電流の方向を判別できないのに対して,方向判別が可能である(例えば,故障点が構内または構外の判定)
よって,両端電源またはループ状送電線のように故障点によって故障電流の方向が変化する系統に対して,選択性を向上させ故障除去時間を短縮させられる利点があり,主要系統にも主保護または後備保護として適用されている。
方向判定要素は母線または送電線電圧を計器用変圧器によってまとめ,この電圧を基準ベクトルとして動作させるため,短絡方向継電器の電気所には計器用変圧器が必要である。
計器用変圧器の設備箇所における至近端の三相短絡故障に対して,方向要素が不動作にならないよう継電器に記憶作用を必要とする場合もある。
整定運用はほぼ過電流継電器と同一に取り扱うことができる。
3.短絡回線選択継電器
回線選択継電方式は並行送電線が平衡運用されている場合,1回線に故障が発生した場合に高速遮断できる利点がある。
高速度距離継電器およびパイロット継電器を除く送電線高速度故障検出方式として最も広く適用されている方式である。
回線選択継電器は変流器の交差接続による差電流検出方法と並行回線の電流を直接比較する方法がとられている。
差電流検出方法は検出継電器として短絡方向継電器または短絡方向距離継電器が使用されるので,計器用変圧器の設備が必要であるのに対して,回線間電流直接比較方式は,電流平衡継電器を使用するため,計器用変圧器が不要であるが,背後電源のない電気所側での適用ができない場合がある。
回線選択継電方式は並行回線間の不平衡電流を検出して継電器動作を行わせるため,回線間の不平衡電流が生じない相手の至近端故障時では直列遮断となり,故障除去時間が遅延してしまう。
並行回線が不平衡運用となる場合は適用できない欠点があり,後備保護として1回線運用時の保護装置が必ず必要で,1回線相手端で遮断した場合は他端が誤動作する恐れがある。
また自動遮断の場合は,故障電流反転による誤動作防止のためインタロック装置を付けなければならない。
4.距離継電器
過電流継電器・短絡方向継電器と比較して高価であるが,高速度動作,電源容量の変動に対して最小動作に要する故障電流が得られると動作性能に及ぼす影響も少なく,適用が容易な利点を有するため,重要な送電線にはほとんど距離継電方式が主保護および後備保護として適用されている。
距離継電器を距離特性上から分類するとインピーダンス形,モー形,リアクタンス形,オーム形などがあるが,回線選択継電器と比べて1回線遮断時の誤動作の恐れがないとともに,故障点までの距離測定により動作するため区間内故障の高速遮断が常に可能であり,他区間との動作協調は段階時限差方式により確実に行いうる利点がある。
5.まとめ
送電線の短絡保護として用いられる過電流継電器,短絡方向継電器,短絡回線選択継電器および距離継電器について,それぞれの適用上における特徴を説明しました。
それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!
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