火力発電プラントの多目的利用について説明する。
目次
- 生産用熱源としての利用(蒸気利用)
- 地域冷暖房用熱源としての利用(蒸気利用)
- 海水淡水化用熱源としての利用(熱量利用)
- 復水器温排水の利用(温排水利用)
- まとめ
一般の火力発電では,燃料のもつ熱量の約40〜50%が復水器の冷却水に奪い去られ,その他の損失もあって熱効率は最新火力でも40%程度であり,ほぼ飽和状態に達している。
そこで火力発電プラントを電力発生という単一目的の使用だけにとどめず,捨て去られる熱量を有効に利用して,各種の生産用や熱供給源として多目的に使用する。
これを火力発電プラントの多目的利用という。
この多目的利用を行うと総合熱効率は,70%〜80%と普通の火力発電の2倍近くになる。
1.生産用熱源としての利用(蒸気利用)
これは自家用火力のほとんどが電力とプロセス蒸気の同時供給という形で,従来から実施してきたものである。
各種工場(繊維,石油,製紙,化学など)でその生産過程上,作業用蒸気を必要とするとき,蒸気タービンの出口からの蒸気を利用する背圧式としたり,蒸気タービンの段落の途中から蒸気を抽出する抽気式として,蒸気を有効に利用している。
蒸気用としては一般に100℃以上の温度を必要とするので,普通の火力発電に比べて発電量は減少する。
なお,背圧式では発電量と熱量が一定の割合で結合され,抽気式では発電量と熱量の調整が独立して行える。
熱負荷の変動の少ないものには背圧式が適しており,熱負荷の変動の大きいものに抽気式が適する。
最近では多数の工場が共同して,大規模の多目的火力発電プラントの設置を進めている。
2.地域冷暖房用熱源としての利用(蒸気利用)
蒸気タービンからの蒸気,またはオープンサイクルの場合のガスタービンの排ガス(400〜450℃程度)によって熱水または蒸気を作り,パイプラインを通して工場,ビル,住宅などに供給し,冷暖房,給湯施設などに利用する。
寒冷地帯の北欧を中心としたヨーロッパ諸国で普及している。
生活水準の向上,生活様式や家屋構造の変遷に伴い,わが国でも地域の事情やその規模によるが,各地で採用されており,公害に対する積極的な対策の1つにもなる。
3.海水淡水化用熱源としての利用(熱量利用)
蒸気タービンからの蒸気を海水淡水化装置の熱源として用い,発電所のボイラ給水や離島の給水源として使用する。
なお,大規模な淡水化による砂漠の緑地化,広域農場の経営なども考えられている。
4.復水器温排水の利用(温排水利用)
復水器冷却後の温排水を利用して,稲,野菜の発育促進用,魚貝類の養殖用,工場の作業用温水,融雪用または各種作業用などに用いられる。
5.まとめ
火力発電プラントの多目的利用について説明しました。
具体的には,生産用熱源としての蒸気利用で,繊維,石油,製紙,化学などの各種工場で活用されている。また,地域冷暖房用熱源としての蒸気利用もあり,蒸気タービンからの蒸気等から,熱水または蒸気を作り,パイプラインを通して工場,ビル,住宅などに供給し,冷暖房,給湯施設などに利用する。
さらに海水淡水化用熱源としての熱量利用や復水器温排水の利用があげられる。
それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!
コメントをお書きください