火力発電所で原油を燃料として使用する場合の有利性を列記します。また,原油を燃料とする発電所の設計にあたって,安全面から特に留意すべき事項を説明する。
目次
- 原油を使用する有利性
- 原油燃焼火力の安全面から特に留意すべき事項
- まとめ
原油は地下油田から汲み上げられ,加熱精製加工をしていくと,ガソリン,灯油,軽油と沸点の違い利用して分留され,最後に350℃以上の残油として黒褐色の重油が得られる。
1.原油を使用する有利性
(1)原油は同一産地の重油を分留して得られるC重油と比べて,硫黄含有率が約50%と低いので,公害対策上,有利である。
(2)同一硫黄含有率の場合,わが国では重油よりも原油の方が安価である。
(3)原油は重油と比べて,ガソリンなどの軽質分が多いので燃焼性が良い。
このため過剰空気率を少なくしてボイラ効率の向上を図ることができる。
補足事項として,重油ボイラでは,点火時に軽油が必要である。
(4)原油は産地からの直接輸送が可能であるため,タンカーからの揚油が可能な発電所であれば,石油コンビナートとの共存を必要とせず,重油に比べて供給安定性に優れている。
2.原油燃焼火力の安全面から特に留意すべき事項
(1)可燃ガスが大気中に漏れないよう燃料配管類はすべて溶接構造とし,ポンプのシャフトシール部にはメカニカルシールを行う。
(2)燃料油貯蔵タンクは,内部に可燃性ガスが充満しないように浮屋根式タンクを採用する。
(3)原油は揮発分が多いため,危険範囲内に設置する電気機器および計測制御装置は防爆構造とする。
(4)燃料配管内の異常圧力上昇を防止するため逃し弁を設ける。
(5)万一,可燃ガスが漏れた場合に備えて,必要箇所に換気ファンを設置し,強制吸入拡散する。
(6)可燃ガス濃度指示警報計を設置する。
(7)静電気帯電防止のために機器配管にはアースを取り付ける。
(8)消火設備の強化
3.まとめ
火力発電所で原油を燃料として使用する場合の有利性と,原油を燃料とする発電所の設計にあたって,安全面から留意すべき点を説明しました。
原油を燃料として使用する場合の有利性として,硫黄含有率が約50%と低く公害対策上で有利な点,同一硫黄含有率の場合,わが国では重油よりも原油の方が安価に得られる,重油と比べてガソリンなどの軽質分が多いので燃焼性が良い,タンカーからの揚油が可能な場合は,石油コンビナートとの共存を必要とせず,重油に比べて供給安定性に優れている点があげられる。
また,原油を燃料とする火力発電所の設計では,安全面から留意すべき点として,燃料配管類はすべて溶接構造とする,内部に可燃性ガスが充満しないように浮屋根式タンクを採用する,揮発分が多いため電気機器および計測制御装置は防爆構造とする,燃料配管内の異常圧力上昇を防止するための逃し弁を設ける,可燃ガスが漏れた場合に備え,必要箇所に換気ファンを設置する,可燃ガス濃度指示警報計を設置する,静電気帯電防止のために機器配管にはアースを取り付ける,消火設備を強化するなどがあげられる。
それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!
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