タービン発電機の遅相・進相運転を解説[発電機7]

 

火力発電所におけるタービン発電機は遅相または進相で運転することにより系統の電圧調整に寄与しているが,この運転を行う際,運転上の制約となる要因について説明する。

 

目次

  1. 発電機の可能出力曲線
  2. 安定度
  3. 発電機の端子電圧
  4. 所内電圧
  5. まとめ

☆ありそうでなかった電験論説音声教材。さらなる一歩を!☆

 

タービン発電機を遅相または進相で運転する際,運転上の制約には次の要因がある。

 

1.発電機の可能出力曲線

 

  発電機の運転可能な範囲は,励磁電流,負荷電流および安定度で定まり,以下の画像の可能出力曲線で表される。

 

 

(1)ABは界磁電流を増大して運転することによる界磁巻線の温度上昇からの制限がある。

 

(2)BCは負荷電流による電機子巻線(固定子巻線)の温度上昇による制限で定格電流が限界となる。

 

(3)CDは低励磁により電機子の磁束分布が変わり,漏れ磁束増大による電機子(固定子)鉄心端部の渦電流の発熱による温度上昇からの制限がある(進相運転)。

 

2.安定度

 

 DC’は発電機を励磁を下げて進相運転した場合,内部誘導起電力が低下し,内部相差角が増加するので安定限界に近づくことによる限界である(同期化力が小さくなる)。

 

3.発電機の端子電圧

 

励磁を強めて遅れ力率運転をすると,発電機の端子電圧は定格値よりも高くなり,電機子鉄心の磁束密度が増加するため損失が大きくなる。

 

また励磁を下げて,進み運転になると,端子電圧が下がって電機子電流が増加して損失が大きくなる。

 

端子電圧の変化幅は定格値の±5%以内となっている。

 

4.所内電圧

 

励磁を下げて進相運転すると,端子電圧が低下して所内電圧が下がるため,補機用の大容量誘導電動機の始動電流,始動時間ならびに始動時の電圧降下が大きくなり,始動不能や他の電気設備が誤動作するおそれがある。

 

誘導電動機の端子電圧は一般に定格値の±10%まで許容される。

 

5.まとめ

 

火力発電所におけるタービン発電機は遅相または進相で運転することにより系統の電圧調整に寄与しており,この運転を行う際の制約となる要因について説明しました。

 

制約事項として,発電機の可能出力曲線,安定度,発電機の端子電圧,所内電圧に関わるものがある。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!

 

☆ありそうでなかった電験論説音声教材。さらなる一歩を!☆