火力発電所において頻繁な始動停止(DSS)を行う場合に制約となる要因をあげて説明する。
目次
- 熱応力による劣化
- 始動時の振動
- 始動・停止による損失
- 発電機巻線の劣化
- 弁類の摩耗
- 補機類の劣化
- 停止中の水質低下
- 排煙成分の悪化
- まとめ
1.熱応力による劣化
始動および停止時はボイラおよびタービンの各部の温度変化が一様でないため熱応力が生じる。
特に肉厚部分では大きな熱応力を生じ劣化の原因になる。
2.始動時の振動
タービン発電機の固有振動数に近い回転数では,非常に大きい振動を生じる。
このような危険速度(臨界速度)は定格回転数より低いので,始動時はこの危険速度を通過し大きな振動を生じやすい。
また蒸気温度とタービン各部の温度差により車軸やタービン車室にひずみを生じると,さらに振動が助長される。
振動によりタービン翼板などの損傷も懸念されるので始動が制約される。
3.始動・停止による損失
始動および停止時には,ボイラおよびタービンにおける熱放散が平常運転時より大きい。
また停止中もターニングなど所内電力を消費するため損失が大きくなる。
4.発電機巻線の劣化
固定子巻線が温度変化による膨張収縮によって劣化したり,回転子巻線が温度変化や遠心力の変化の影響を受けて劣化する。
5.弁類の摩耗
始動・停止時は始動バイパス系統の調整弁など高差圧弁には,高い差圧の水や蒸気が流れるため摩耗を生じる。
6.補機類の劣化
ポンプやファンなど補機類の始動・停止を繰り返すので,特に給水ポンプ用蒸気タービンなどの劣化を生じる。
7.停止中の水質低下
停止中は系統内の水質が低下する。
循環式ボイラでは,始動時にボイラ内の水の一部を系統外に排出し水質の改善を行うので,出力上昇が制限される。
また,還流ボイラでは始動時に系統内で水処理を行うため,ボイラの点火が遅延する。
8.排煙成分の悪化
始動・停止時は燃料の燃焼状態が不安定になるためばいじんやNOxが増加し,環境への影響がある場合がある。
9.まとめ
火力発電所における頻繁な始動停止(DSS)を行う場合の制約となる要因について説明しました。
具体的には,ボイラ,タービン,配管等の熱応力による劣化,始動時のタービン発電機の振動,始動・停止による所内電力の消費が大きくなる損失,発電機巻線の劣化,弁類の摩耗,補機類の劣化,停止中の水質低下の対応,不安定な燃焼状態によるばいじんやNOx等の増加による排煙成分の悪化があげられる。
それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!
⬇今回の内容に関連する内容です(平成6年の過去問です)。
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