周波数低下の影響を解説[施設管理25]

定格出力付近で運転している汽力発電所において,系統事故などにより周波数が低下した場合,以下の設問について説明する。

 

目次

  1. 発電所出力変動とボイラ,タービンへの影響および運転上の留意事項
  2. 所内補機への影響および運転上の留意事項
  3. 周波数の低下が大きくなった場合に,発電機を解列させる理由
  4. まとめ

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電力系統の周波数は,時々刻々と変動する負荷に応じて発電機の始動・停止や出力調整を行い,常に需要と供給力のバランスを取ることにより,50Hzまたは60Hzでほぼ一定になるように制御されている。

 

しかしながら,発電機事故や系統事故などにより供給力が不足すると周波数が低下する。

 

1.発電所出力変動とボイラ,タービンへの影響および運転上の留意事項

 

定格出力付近で運転中に系統周波数が低下した場合,数時間程度であれば過負荷運転することができる。

 

過負荷運転の範囲はユニットの機器仕様,設計方針などにより異なるが,主としてタービンの制約から定格出力の5%程度の過負荷が限度とされている。

 

ボイラ,発電機等は余裕を持った設計になっているのが一般的であり,過負荷の制約にはならない。

 

過負荷運転を行うには,タービン蒸気流量を増やす,タービンの抽気量を減らし動翼に作用する蒸気量を増やす,タービンの蒸気圧力を高めるなどの対応が考えられるが,一般にはタービンの蒸気流量を増やす方法が行われている。

 

過負荷運転を行う場合には,機器の運転状況に十分注意し,監視を強化するとともに,タービン軸のスラストおよび翼の振動,励磁機ブラシのスパーク,各種調整弁の開度の余裕に留意する必要がある。

 

過負荷時の出力は復水器の冷却水の温度に左右されるので,夏季,冬季で区別して運用値を決める。

 

2.所内補機への影響および運転上の留意事項

 

汽力発電所の所内電源は,主発電機または電力系統から受電するのが一般的であり,系統周波数が低下すると,補機を駆動している誘導電動機の回転速度も低下する。

 

ボイラの給水ポンプ,復水器冷却ポンプなどポンプ類の回転速度が低下し,吐出圧力,流量が低下するので,ボイラ蒸気圧力を下げざるを得ず,発電所出力は減少する。

 

冷却水ポンプの流量が低下すると,特に夏季の冷却水温度が高い時期には復水器真空度が下がり,発電所出力を抑制しなければならなくなる。

 

ボイラ通風機,微粉炭機の回転速度が低下すれば,通風量が減少し,燃焼効率が低下する。

 

系統周波数低下時は,ボイラの流量,復水器真空度などに注意しながら,ボイラ蒸気圧力や発電所出力を抑制する措置を講ずる。

 

3.周波数の低下が大きくなった場合に,発電機を解列させる理由

 

系統周波数が低下すると,タービン動翼の共振が問題となる。

 

タービンの動翼は円周方向,軸方向,ねじれの共振モードを持つが,低圧タービンの最終段もしくはその前段の動翼は細長く固有振動周波数が低いので,タービンの定格回転数およびその整数倍から十分,離して設計することが困難である。

 

このため低周波運転すると,共振周波数またはその付近で運転することになり,振動による材料の疲労蓄積,クラックの発生,ひいてはタービン翼の破損,飛散など重大事故につながる恐れがある。

 

このため,汽力発電所では低周波数運転限度を設け,周波数低下がこの限度を超えた場合は,発電機を解列する。解列されると,さらに供給力が不足して周波数が低下するので,最終的には全停になる恐れがある。

 

ゆえにガバナーフリー運転,緊急融通など瞬時予備力の確保,系統の分離,揚水機遮断,負荷制限などの対策を行う。

 

周波数低下時の許容運転時間は,50Hz機の場合は48.5Hzで10分,48.0Hzで1分,60Hz機の場合は58.5Hzで10分,58.0Hzで1分が目安とされている。

 

参考だが,発電機,変圧器で電圧が一定で周波数低下があると,過励磁となる。

 

4.まとめ

定格出力付近で運転している汽力発電所において,系統事故などにより周波数が低下した場合において,発電所出力変動とボイラ,タービンへの影響および運転上の留意事項,所内補機への影響および運転上の留意事項,周波数の低下が大きくなった場合に,発電機を解列させる理由について説明しました。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!

 

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