電力系統の急速な拡大による短絡容量の増大が問題になっているが,これの軽減対策について説明する。
目次
- 系統を区分することによる軽減対策
- 系統のインピーダンスを増大することによる軽減対策
- まとめ
電力系統の急速な拡大に伴い,必然的に短絡電流が増大して,短絡電流容量の大きい遮断器,断路器,変圧器などの直列機器を必要とし,その設備費を増加させ短絡電流による誘導障害を大きくしている。
これらの不利を除くため短絡容量軽減策の主なるものについて説明する。
1.系統を区分することによる軽減対策
(1)高次電圧系統の導入による低次電圧系統の分割
高次電圧系統を導入して系統連系を行い,低次電圧系統を所定の信頼度レベルを保持する範囲で可能な限り分割すると,低次電圧系統の短絡容量は減少する。
例えば,我が国では275kV(220kV)の基幹系統を1つの電源として,変電所の変圧器で低次の電圧系統に連系されているが,これらの低次系統相互間は分割されていくので,基幹系統ほど短絡容量は大きくない。
そこで新規に500kV系統を導入して,今までの275kV(220kV)系統を適当なブロックに分割すると,それらの短絡容量が軽減できる。
(2)系統または母線の分割
1つの電力系統を2〜3の小電力系統に分割したり,送電線の並列運転回線数を減少させるとか発変電所の母線を常時遮断器などの開閉器で分割し,系統をなるべく放射状として運転すると短絡容量は減少する。
しかし,これらは供給信頼度を低下させ系統運用面で損失を生ずる場合が多いので,経済運用面からも限界がある。
(3)事故時母線分離方式の採用
線路事故発生時に変電所の線路用遮断器より早く母線を分離し(常時は母線連絡遮断器で連結されている),線路用遮断器の遮断容量を軽減する。
この方式では母線分離用として遮断容量の大きい高速度遮断器を必要とするが少数でよい。
なお,この場合は変電所バンク間の負荷配分および保護方式に注意しておく必要がある。
一方,最終遮断までの時間が長くなる欠点がある。
(4)直流連系の採用
交流電力系統を幾つかに分割して,それらを直流連系(交流→直流→交流)した場合,短絡電流の大きさはそのブロック内の交流電源容量のみで定まるので短絡容量軽減策として有効である。
さらに交直変換装置を高速制御することによって短絡容量抑制機能を高めることができる。
2.系統のインピーダンスを増大することによる軽減対策
(1)高インピーダンス機器の採用
発電機,変圧器のリアクタンスを大きく設計すると機器は小型化され価格は低減されて有利になり短絡電流が減少する。
しかしながらリアクタンスをあまりにも大きくすると特殊設計になってコスト高となる。
また系統の安定度が低下し,無効電力損失が増大して効率が低下して,電圧調整も困難になるので許容限界がある。
(2)限流リアクトルの挿入
短絡電流を小さくするために,限流リアクトルを送電線に直列に挿入する場合と発変電所の母線間に挿入する場合がある。
前者は回路の負荷電流がリアクトルを流れるのでその容量が大きくなり,無効電力を増大し電圧調整と電力潮流の制御を困難とし,系統の安定度が低下するなどの不利がある。
後者は常時潮流が小さいためリアクトルの容量は小さくすむが,あまりに小さすぎると,これに対処するため系統運用の繁雑さを招くことになる。
3.まとめ
電力系統の急速な拡大による短絡容量の増大が問題になっており,軽減対策について説明しました。
主な対策として,系統を区分することによる方法,系統のインピーダンスを増大する方法を紹介しました。
それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!
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