電気機器の非破壊試験の解説[施設管理37]

高圧以上の交流電気機器等の絶縁診断方法のうち,非破壊試験方法について,その原理と特徴を説明する。

 

目次

  1. 絶縁抵抗試験
  2. 直流(高電圧)試験
  3. 誘電正接(tanδ)試験
  4. 部分放電(コロナ測定)試験
  5. まとめ

☆これまでになかった新電験論説攻略法の紹介☆

1.絶縁抵抗試験

 

(1)原理,

 

直流電圧を印加して絶縁抵抗を測定し,その値から絶縁物の劣化状態を判定する。

 

(2)特徴

 

①一般に,直流500Vまたは1000Vの絶縁抵抗計が用いられ,装置が持ち運びやすく取扱いも容易である。

 

②初期の絶縁診断方法として広く実施されている。

 

③吸湿による絶縁劣化診断に適する。

 

汚損や欠陥による異常のチェックに活用される。

 

④,直流(高電圧)試験と比べて電圧が低いので絶縁抵抗値の精度がやや低い。

 

また温度,湿度などの測定条件により測定値が変わりやすい。

 

⑤,診断のため,設備の停止が必要である。

 

2.直流(高電圧)試験

 

(1)原理

 

直流電圧を印加して検出される電流の大きさおよび電流の時間的変化を測定し,絶縁物の劣化状態を判定する。

 

(2)特徴

 

①測定実績が多く,信頼度が高い。

 

②誘電正接試験に比べて電源容量が少量でよく,特にケーブル等の劣化判断に採用される。

 

③,絶縁物の吸湿劣化の検出に効果がある。

 

3.誘電正接(tanδ)試験

 

(1)原理

 

交流電圧を印加,上昇,下降させて,シェーリングブリッジやtanδ計などにより,絶縁体の誘電正接(tanδ)の電圧特性(ヒステリシスの有無,形状),温度特性を測定し,絶縁体の劣化状態を判定する。

 

(2)特徴

 

①大型の電源装置が必要となる。

 

②絶縁物の形状,寸法に影響されず,絶縁物の吸湿,熱,薬品等による劣化の検出に効果がある。

 

③油入機器では,温度により測定ちが変化するため,測定時の油温も記録する。

 

4.部分放電(コロナ測定)試験

 

(1)原理

 

一般には絶縁物に交流または直流の高電圧を印加し,部分放電の発生,消滅電圧,放電電荷量を測定し,絶縁物の劣化状態を判定する。

 

(2)特徴

 

①絶縁体中のボイド,クラックなど局部的な絶縁不良の検出ができ,絶縁物が全路破壊に至る前の劣化原因の段階での診断が可能である。

 

②部分放電の検出方法には,パルス電流検出法と音響パルス検出法があり,後者は活線状態で測定できるので設備を運転しながらの継続監視が可能である。

 

③パルス電流検出法では,部分放電の発生個数,平均放電電流,最大放電電荷量,放電発生電圧,周波数特性などの測定があり,これらを総合勘案して絶縁劣化を診断する。

 

音響パルス検出法と組み合わせることにより,部分放電発生箇所を推定できる場合もある。

 

④測定に際して,外来ノイズ(電気的あるいは音響的ノイズ)に配慮する必要がある。

 

⑤交流高電圧試験法による絶縁物の電圧ー電流特性で得られる2つの電流急増変位点のうち,第一変位点は部分放電開始点と一致する。

 

5.まとめ

☆これまでになかった新電験論説攻略法の紹介☆

 

高圧以上の交流電気機器等の絶縁診断方法のうち,非破壊試験方法について,その原理と特徴を説明しました。

 

具体的には,絶縁抵抗試験,直流(高電圧)試験,誘電正接(tanδ)試験,部分放電(コロナ測定)試験について,取扱いました。

 

電気設備のメンテナンスにおいて,設備の健全性を確認するための大切な試験項目ですので,しっかりと覚えておきましょう。

 

それでは,人間万事塞翁が馬。人生,何事も楽しみましょう!

 

☆これまでになかった新電験論説攻略法の紹介☆